エンジニアの次の一歩は「変革を定着させる力」かもしれない
技術だけではないキャリアを考えたら、「PoC止まりを超える」が軸に見えてきた

背景:なぜキャリアについて考えているのか
最近、自分のキャリアについて悩むことが増えました。
これまではエンジニアとして「技術力そのもの」を磨くことを重視してきましたが、転職を機に状況が変わりました。
技術だけでなく、プロダクトや事業の側面にも関わるようになり、活動の幅が広がったのです。これは良い判断だったと思います。
一方で、キャリアの軸を持たずに「技術も少し、事業も少し」という中途半端な存在になってしまうのではないか、という危機感もあります。
長期的に見て、自分はどのように市場価値を持ち続けるべきなのか。
さらに難しいのは、このキャリアプランを言語化するのがとても難しいという点です。
参考にできるようなロールモデルもあまり見当たらず、自分なりに模索し続けるしかないのだろうと感じています。
この問いが、今回の振り返りの出発点です。
プロトタイプで止まらせない役割
これまで自分が関わってきたテーマには、共通点があります。
それは 「プロトタイプで終わらせず、本番で活用される仕組みにする」 ということです。
具体的には、例えばこんな取り組みがあります。
- 検証段階だったAI製品を、実際のデータ分析業務に活用する
- 生成AIのRAGチャットシステムを構築し、問い合わせ対応業務に活用する
- プロダクト開発における横断的な課題を、共通基盤化して解決する
いずれも共通しているのは、「試す」で終わらせず、業務や組織に定着させる という点です。
自分のスタイル:カオスを整理する
私はよく「しゃべるのが上手い」と言われることがあります。
ただ自分としては、それを特別な能力だとは思っていません。
私がやっているのは、
- 事前にアジェンダや論点を準備すること
- 会議の場で出てきた意見を構造化して整理すること
- 目的を意識してファシリテーションすること
つまり、エンジニアとして培った構造化・論理的思考のテクニックを会話に応用しているのだと思います。
決して「芸人のように面白い話をする」とか、「悪徳営業のように話を盛って押し切る」といった話術ではありません。
結果として、複雑で混乱した状況を整理し、プロジェクトを次のステップへ進める推進力につながっています。
自分としては特別なこととは思っていませんが、周囲からは評価いただくことが多く、この点もキャリアの強みとして考えていこうと思っています。
深く関わるか、薄く関わるか
とはいえ、関わり方には悩みがあります。
案件が多い環境では、以下のような選択を迫られます。
- 一案件に深く入り込む
→ 本番化までしっかり伴走できるが、稼働が重くなりやすい - 複数案件に薄く関与する
→ 知見を横展開できるが、各案件での成果が見えにくい
今の自分の結論に近いのは、「横断で薄く+重点案件には深く」 というスタイルです。
横断的には「プロトからプロダクトへ」の型を広め、特に重要な案件は深く関わって成果を残す。そして運用フェーズに入れば仕組みを残して手を離す。
これならキャリア実績を積みつつ、ワークライフバランスも守れるのではないかと考えています。
キャリアの言語化
ここで難しさを感じるのは、このキャリアを一言で表すのが非常に難しいということです。
既存のロールと比べてみると、それがよくわかります。
- 情シス:社内ITの安定稼働を守る役割。私は守りではなく「変革を定着させる」役割。
- テックリード:技術的意思決定やコード品質に責任を持つ役割。私は技術に加えて「業務定着や運用」まで関わる。
- PM:スケジュールや予算を管理する役割。私は進行管理よりも「PoC→本番化の壁を越える」ことに注力している。
つまり私は「情シスでも、テックリードでも、PMでもない」。
ただそれぞれの要素を部分的に持ちつつ、**「DX文脈における変革を定着させるエンジニア」**という立ち位置にいるのだと思います。
このキャリア像はまだ世の中で一般的に言語化されていないし、参考になるロールモデルも少ない。
だからこそ、自分なりに模索しながら形をつくっていく必要があります。
私は「技術をベースに、カオスを整理し、変革を定着させるリーダー」としてキャリアを歩んでいきたい。
そう思いながら、これからも案件選びや働き方の中でさらに磨いていく必要があると感じています。
おわりに
「PoC止まり」をどう超えるか。
DXの現場ではありふれた課題ですが、自分自身のキャリアを考える上でも、避けて通れないテーマです。
技術 × ファシリテーション × 定着化
この3つを軸にしながら、そしてロールモデルが少ないからこそ自分でキャリア像を描いていく姿勢を持ちながら、今後も試行錯誤を続けていきたいと思います。

りょう
いろいろなことを考えるエンジニア